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  • 執筆者の写真L'escargot Design

思わぬリスク回避にも。かかりつけデザイナーのススメ



最近よく聞く、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師。


同様に、かかりつけのデザイナーを決めておくのはいかがでしょうか。




チラシやパンフレットなど何かをつくる度に毎回、相見積を取って、その都度安いところに依頼する。そうすれば目先のコストは節約できるかもしれませんが、デメリットもあります。一方、いつも決まったところへ依頼し、良い関係を築くことで得られるメリットは小さくありません。


自然と回避できるリスクもあり、発注にあまり慣れていない方に特におすすめします。




統一感とクオリティの安定

企業やブランドのイメージはきちんとコントロールしないとブレてしまいます。


見積重視で毎回違うところ(一番安いところ)へ発注していたら、いつの間にかイメージがバラバラに…という事態にも。




決まったデザイナーに発注すれば、イメージの統一が比較的容易になります。むやみに低価格を追いかけないことでクオリティも期待できますし、断続的に展開する複数のツールを連動した考え方で構築することもできます。 制作物が多い場合はブランド(商品)ごとに分けるなどしても良いかもしれません。



進行もスムーズに

その他、進行面でのメリットがあります。


初めてのご依頼いただく場合は特に時間をかけてヒアリングしたり、資料も多めに提供してもらう必要があります。また、確認・承認のプロセス、かかる時間が各企業によって違うため、進行自体についてのすり合わせも必要です。

繰り返し仕事をしていくと、前提となる説明や打ち合わせは当然、ある程度省けるようになってきます。

スピード感を要求される現場では、すぐに本題に入れる環境はとても大きなアドバンテージとなります。




また、コミュニケーションがスムーズになり、スピード感もお互いにわかってきます。予想も立てやすくなり、打てば響く臨機応変な対応にもつながります。


制作を円滑に進めることはストレスを減らし、クォリティに良い影響をもたらすことも多いでしょう。




思わぬリスク回避にも

クリエイティブ関連で時々問題になるのがイラストや写真などの無断使用。


例えば、仕上がったパンフレットのイラストやデザイン、コピーなどを制作者の許可なく使いまわして、ポスターやチラシ、グッズなど、違うものをつくってしまう。無断流用となり、大きなトラブルになり得ます。


事態が収まらずに公になってしまえば、企業イメージは傷つき、大きなダメージになりかねません。




この無断流用トラブルを防ぐのに一番有効なのは、同じ内容に関する制作物は同じデザイナー(制作者)に依頼すること。


素材の流用費が発生することもありますが、最初からわかっているのであれば、全体を含んだ見積を取っておけば安心です。




発注先を振り分けなくてはいけない場合、例えば印刷物の素材をWEBに使いたい時(その逆も)などは、早めに相談するようにしましょう。




同じ制作物の改訂版は同じ人(制作会社)に頼むのが原則。効率も良く、何より合理的ですし、権利関係以外でも多くのトラブルや無駄を防ぐことができるはずです。




新たに制作したもの以外に、既存の素材などを使っている時も要注意です。扱いがロイヤリティフリーの有料レンタル素材でも、その会社ごとに微妙な違いはありますが、契約者以外が使うことは禁じられているのがほとんど。厳密な制限があります。


ロイヤリティフリーと言っても、どこまでも「フリー」ではありません。




また、無料素材や素材集などの素材でも、たいていの場合、譲渡や配布は禁じるなど条件がついています。デザイナー(制作者)が同じであれば、素材の権利関係についても把握しているはずです。



こんなケースも




以前、南青山のデザイン事務所で働いていた時に、こんなことがありました。


私が担当した車内吊りポスターで自分の写真が使用されているのを見かけたとのことで、あるフォトグラファーから電話がありました。まずは採用についての感謝を伝えてくれたのですが、話はそこで終わりません。

私が近くのレンタル写真会社から借りたその写真。ところが彼にはどこからも使用料が一切支払われていないし、連絡もない。同じ写真で複数の会社と契約しており、どこの会社かわからないので教えて欲しいとの問い合わせでした。


ポスターの制作会社がわからなかったので、私のところにかける前にまず、広告の依頼主である企業に電話をしたそうです。




こちらはきちんと規定の料金を払っていて何も落ち度はなく、もちろんクレームでもなかったのですが、お客様のところまで話が行ってしまったと知って、さすがにヒヤッとしました。




今ならSNSなどの普及もあり、下手をすると多くの関係者を巻き込んでしまう危険性もあります。



最後に…

企業とデザイナー(制作会社)が良い関係を築くことは双方にメリットがあります。いきなり一人(一社)に決めるのは難しくても、依頼先を頻繁に変えずに、じっくり付き合う方向へシフトしていくだけでも違うのではないかと思います。

レスカルゴでも、打ち合わせ時の雑談の中で、制作に関するちょっとした相談に乗ることがあります。ご依頼とは関係なく、動画制作会社やイラストレーター、印刷会社を紹介してほしいなどと頼まれることもあります。




私に限らず、特にフリーランスの場合、分野にとらわれない広いネットワークを持っている人が多いと思います。こうしたデザイナーであれば、専門外の相談に乗ってもらうことも期待でき、仕事を重ねて良い関係性ができてくれば、クリエイティブ分野のブレーンとして、何かと相談できる力強い味方になってくれるかもしれません。



「かかりつけ」のような存在の頼れるデザイナーを探してみてはいかがでしょうか。


 

レスカルゴデザインオフィスのブログでは、デザイン発注に慣れていらっしゃらない方向けに幾つか記事を書いています。ご興味がありましたらぜひそちらもお読みください。


※このコラムは、2019年6月6日掲載「マイベストプロ東京」藤原ユカコラムより加筆修正して移行しました。

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