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執筆者の写真L'escargot Design

点字図書館のひみつ



日本点字図書館外観

フラワーアーティストのFさんに誘われて、先日、点字図書館に見学に行ってきました。ちょっと急ではあったのですが、以前から点字には興味があったので、二つ返事で誘いに乗りました。場所は高田馬場。実は良く利用する駅なのに、恥ずかしながら、こういう施設があることは全く知りませんでした。 地図を頼りに歩いていくと、まず目に入ったのが建物に下がるたくさんの鎖。ご案内いただいた図書館総務課のKさんによると、この鎖は知識の滝をイメージしたもの。視覚障がいは情報障がいとも言われるとのことで、この「知識の滝」に点字図書館の思いが表れているのですね。 因に、この鎖はステンレスで、26トンもあるそう。当初はこれにアイビーを絡ませたかったらしいのですがうまくいかず、次にゴーヤを試したのですが、金属が熱くなりすぎるのか、これもやはりあまりうまくいかなかったそうです。でも、実際の温度はともかく、ステンレスの鎖は、見た目なかなか涼しげ。台風の日など風が強い時には、かすかにさらさらと音がするのだそうです。


案内図

一階の案内板の前から、流れるようなKさんのご説明で見学が始まりました。案内板にはもちろん点字が入っていますが、通常のこうした案内図と同様に凡例の説明がまとめてあって、つくりは同じ。


点字ブロック

通路の床には点字ブロック。点字ブロックは日本で発案され、最寄りの高田馬場駅は、43年前に点字ブロックを最初に導入しました。先日も青山一丁目駅で悲しい事故がありましたが、その当時、高田馬場でも事故があり、それがきっかけだったとのこと。点字ブロック自体は51年前にできたのですが、色などが標準化されたのはわずか15年前。 図書館と言っても、ここで閲覧することはほとんどないせいか、普通の図書館とはだいぶ趣が異なります。図書は全国の利用者へ郵送によって貸し出されますが、その他、点字図書に関わる様々な過程を担っています。 まずは読めるようになるための点字教室や、情報を入手できるようになるための視覚障害者向けIT教室をマンツーマンで行っています。31万人の視覚障害の方のうち、全盲の方が20万人。その中で点字を読めるのは1割程度だとうかがいました。根拠もなく、もう少し多いイメージを持っていたのですが、途中で見えなくなった方や他にも障がいをお持ちで点字を読み取ること自体が難しい方もいるということ。お話をうかがうと、なるほどと思うのですが、想像するだけではやっぱりそこまでなかなか思い至らず、少々浅はかな質問もしてしまいました。

こうした状況の中、点字を読めるようになるためのサポートをする一方で、それだけに留まらず、点字を読めない人のための録音図書も制作しているそうです。


下町ロケット

蔵書の収められた書庫では、下町ロケットや東京タワーも見せてくださいました。上の写真、一冊の本が点字にすると量が増えるのがわかります。

下の写真の棚の2段目に置いてある辞書。並んでいる赤い背表紙全部がこの本の一冊分の点字の辞書だそうです。


辞書一冊分の点字辞書

貸し出される点字図書はボランティアの方たちの手によって点訳されていますが、そうした部署の他に、さらに朗読を録音するスタジオも。音読の図書にも当然と言えば当然ですが校正があって、間違っているところは修正したりと4~5ヵ月かかるとか。点字も録音も、制作もさることながら、校正や修正が大変そうで気が遠くなりました。また、音読の雑誌も発行しており、これも全国へ発送されます。


カレンダー印刷中

対面で専門図書を音読してくれる部屋や点字図書の印刷を行っている部屋も見学させていただきました。ちょうどカレンダーを制作中で、亜鉛板の型ではさんで点字を印刷していました。なかには入れませんでしたが、「ユニバーサルデザイン」の表示のある部屋も。別の場所では時折、副音声での映画上映会も開かれているそうです。 図書館とくくってしまうには、あまりにたくさんの役割があるこちらの施設、“日本”点字図書館という名前ですが、実は民間なのだとか。1940年に本間一夫氏によって設立され、企業や個人の寄附に助けられて運営されています。見学の随所で、これはどこどこの寄附で、という説明が何度かありましたが、国や自治体で運営していないというところが驚きというか、若干不思議にも思いました。 こうした図書館は都内では7カ所、7,000冊以上の蔵書を持つ点字図書館は全国で70カ所。ここ高田馬場の日本点字図書館からは毎日、2トン車で郵便局へ持ち込まれ、全国へ貸し出しされるというお話に圧倒されました。


点字図書見開き

ところで、事業もとても興味深いものでしたが、私は点字そのものにもとても興味がありました。白い紙にポツポツと打たれた暗号のような文字は、とても神秘的で、制作の過程をうかがったあとでは感動的でもあるのですが、伝えることを職業としているデザイナーにはとにかく非常に興味を引かれる対象です。ひとつの文字は6つの点を基本として構成されていること、読む時と書く(打つ)時は逆(鏡文字)であること、両面印刷はどうするのか、など、いろいろ教えていただいて、なんとなく概要がわかった時の満足感といったらありません。大げさですが、今まで全く知らなかったひとつの世界を垣間みた喜びとも言えます。私も少しだけですが「知識の滝」に触れることができた気がしました。 点字のサイズは指で追うという性質上、基本的には同じ。私たちが扱う文字のように、キャッチコピーを大きく、注釈はかなり小さく、と言ったメリハリはありません。ただ全く同じものしかないかというとそうでもなく、Lサイズの点字というものもあって、私たちが例えば年をとったりして「小さい文字だと読みにくい」というのと同じ考え方なのだそうです。あたりまえかもしれないですが前述の凡例と同様、共通点もあるんですね。奥が深そうです。外国でも点字は6つの点で構成されているというお話に、そちらも少し知りたくなりました。考案されたのはフランスで、もともとは暗号をヒントにつくられたものだそう。(暗号ぽいと思っていたら、やっぱり!)

帰りに売店で点字セットを購入して、帰宅後早速チャレンジ。名刺に点字で名前を打ってみました。自分でやってみると、どのくらい根気のいる作業かとか(慣れないせいも大いにありそうですが)よくわかります。大変ですけれど、ちょっとはまりそうな気配も。


名刺に印字

(あってるかな?)

点字図書館では、小さなところでは自前の名刺に点字を入れてくれるサービス、大きなところでは企業からの依頼で商品開発の協力やモニター調査などもしているのだそうです。

許可をいただいて撮影した写真をFacebookページにもアップしました。ご興味ありましたら、そちらもご覧ください。

 (見学は申込制です)

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点字とは関係ないですが、図書館つながりで、「印刷図書館」も!

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