少し時間が経ってしまいましたが、東京都中小企業振興公社のご担当者から「デザイン経営」のワークショップへのお誘いをいただいて、ちょうど少し前に同じテーマのセミナーを聴講してきたこともあり、興味津々で参加させていただきました。
「デザイン経営」とは、ざっくり言うと、従来の(狭義の)デザインの役割から発展して、「デザイン思考」そのものを経営に取り入れようという手法のようです。
経営チームへデザイン責任者を配し、事業戦略や製品、サービス開発の最上流からデザイナーが参画するのが必須条件だそう。「デザイン経営宣言」の中にはその他、人材育成や部門の設置など具体的な取り組み方が示されています。
「なぜデザイナーはイノベーションの役に立つのか?」というコラム(9p)の中に“観察の達人であり、顧客の潜在ニーズの発見を主導する”とあります。
ワークショップでは講師の廣田尚子氏の指導のもと、企業とデザイナーがチームになり、用意された「経営デザインシート」を埋めていきます。私はもちろん、デザイナーとして参加し、その日初めてお会いした企業の企画ご担当者と一緒に、課題に取り組みました。
まずは現状の企業理念、資源や状況、課題を洗い出します。次に約10年後の2030年、こうなっていたいという理想の状況を設定。それからその現状と理想をどうつなげていくか、どうすれば実現できるのか、戦略を考えていきます。仕上げに将来のキャッチフレーズを決めて終了。
詳しいことは守秘義務があるのでお話しできませんが、これが(いい意味で)非常に手強くて、話はどんどんと深いところへ。
普段の販促や商品開発といった「目の前の課題」とは違った、もっと大きな、非常にダイナミックな経験になりました。それだけに時間が足りなくなり、休憩時間もそこそこに制限時間いっぱいまでかかりましたが、なんとか最後の発表までこぎつけました。
ここまでの話になるのは普段の業務ではさすがに珍しいことですが、考えてみると、今まで経験してきた案件でも、特に起業したての法人の経営者の方や個人事業主の方からのご依頼では、制作の初期段階のヒアリングがほとんどカウンセリングのようになることがよくあります。
それを何度も繰り返し、その結果方向性が定まったり、当初の考えから路線変更したりすることも珍しくありません。
これはこちらで何か市場調査をしなくても、経営側が持っている情報を俯瞰から客観的にヒアリングし、質問を繰り返し、整理して示すことで、はっきりしてくることが多くあるからだと思います。そういう方向に行くことはデザイナー、あるいはクリエイターとのミーティングでは普通に起こりうることだと思いますので、経産省のこの「デザイン経営」の取り組みというのは、非常に理にかなっていると思いました。
ご興味のある方は、是非リンク先の資料をご覧になってください。また、デザイナーと一緒に経営デザインシートを埋めてみたい、という企業の方いらしたら、ぜひお声がけください。
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