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  • 執筆者の写真L'escargot Design

女性向け=ピンク、は危険な思い込み



「女性向けなのにどうして黒なんですか?」


「女性向けのデザイン」と大きく掲げたタペストリーを前にして、ある展示会に出展中、来場者の方にこう尋ねられました。

 「女性向けなのにどうして黒なんですか?」



一瞬なんのことを言われたのかわからなかったのですが、黒ベースのタペストリーのデザインをご覧になって、「女性向けなら普通、ピンクじゃないのか」と思われたそうです。




女性向け=ピンク…。

確かにピンクが好きな女性は多いという印象があります。でもだからと言って女性向けならピンク、というのはちょっと急ぎすぎです。




女性向けの商品と言っても、かわいく持ちたいもの、美しさやかっこ良さが要求されるもの、ただただ実用的なもの…いろいろな性格のいろいろな価格帯の商品があります。

女性のほうも可愛いものが好きな人、きれいなものが好きな人、かっこいいものが好きな人、シンプルなものが好きな人、落ち着いたものを好む人…いろいろな人がいます。

また、嗜好性とは別に、年齢や職業、環境、同じ人物でもシーンによって選ぶものが変わってくる場合もあります。




あえて女性っぽく見えない方がいい商品もあるでしょう。いかにも女性向けっぽくつくられたものを嫌う人もいるかもしれません。




どういうわけか少数派として語られることも多い「女性」ですが、なにしろ人口の半分は女性なのですから、その趣味嗜好を十把一絡げに考えるのも大雑把すぎです。




それに色に関しては、女性の方が自由度が高い。




例えばピンクのシャツなら男性でも着ている方は時々いらっしゃいますが、ピンクの小物を持っている方はあまり見かけません。




対して女性の場合、ピンク、青、茶、黒…各々好きな色のものを着たり持ったりしているのではないでしょうか。むしろピンクの服を着ている人などはどちらかというと少数派なのでは。


それなのに女性=ピンク、という単一的な結論に飛びついてしまうのは解せないし、もったいない。

女性としては、なんだか少し馬鹿にされたような気にさえなってしまいます。


識別として用いる場合はあり

ただ、そうしたこととは関係なく「女性は赤やピンク、男性は黒や青」というように、色が識別の助けとして機能する場合はあります。例として公衆トイレのサインがわかりやすいかもしれません。




商品では例えば、小さい顔用のマスクなど(大きさから一般的に女性向け)も好き嫌いとは関係なく、一瞬で女性(や子ども)に適したサイズと判別しやすくなります。




このように今まで性別に関係なく存在していたものを女性により適したものとして開発した商品や「女性向け」自体が珍しいものなどは、その思い込み(刷り込み)を利用して、その違いや特性を一目でわかりやすくできるのです。




それとは逆に、女性向けなのが普通の商品やサービス、その販促ツールであれば、もう少し自由に色彩を考えるべきではないでしょうか。

どういう位置付けの商品なのか、まずはそこを見極めること。 女性向けであることを表すのは色だけではありませんから、総合的に考えるのも大切です。

時代とともに変化する価値観




また、こういう思い込みや価値観は時代とともに変化します。

学校での持ち物…ランドセルなども、今でこそ様々なものが流通していますが、昔は女の子は赤、男の子は黒で真っ二つに分かれていました。

でもこの赤と黒の色分けは本当は全く意味のないもので、実は別に決まりもなかったのですね。なんとなくそういうものだろうと親も店も思い込んで、あてはめていただけ。


私が子供の頃に一人、黄色いランドセルで通学している女の子がいました。登下校の時の彼女の目立つこと目立つこと。結果的にその女の子自身もちょっと目立つ存在になっていて、周りの私たちもみんな一緒でなくてもいいんだな、と教えてもらったような気がします。




最近ではジェンダーに関係なく選んで着られる制服を採用する学校も登場しています。また、イギリスで暑い夏なのに半ズボンを禁じられた男子生徒が全員でスカートを履いて登校した(半ズボンは禁じられているけれど、スカートは禁じられていない!)、なんてニュースも話題になりました。


イギリスの話は理不尽な校則への抗議のための天才的(ですよね)な手段でしたが、写真を見たら意外に楽しそうで、スカートを履くことにもまんざらでもない様子。周りの女の子や大人たちも普通に受け入れているのが微笑ましい。




今、識別として機能している色分けも、これから先、あまり意味がないものになっていくかもしれません。女性向けであることが珍しいものも、同様なものが増えればその中で差別化を考える必要があります。


多様性がすすむなか、その時々で、適した色、適したアプローチを考えていくことが、ますます重要となっていくでしょう。



 一歩間違えると危険なピンク

また、一口にピンクと言っても色のイメージはとても幅広く、シックな大人ピンクもあれば、かわいらしいベビーピンクもあります。他にもサーモンピンク、ショッキングピンク…混色の微妙な配分、黄寄りだったり青みがかっていたり、濃さや他の色との配色によっても、印象が大きく違ってきます。 下手をすれば安っぽい印象にもなりかねない、ステレオタイプな捉え方が透けて見えれば反感を持たれかねない、ピンクは実は意外と危険な色。


ダサピンクという言葉を聞いたことはありませんか? 使いこなすのは割と難しい色なのです。


※このコラムは、2019年8月7日掲載「マイベストプロ東京」藤原ユカコラムより加筆修正して移行しました。


 

レスカルゴデザインオフィス 藤原ユカはデザインや販促の専門家として専門家派遣事業に登録しています。業務案内やパンフレットをつくりたい、新商品のパッケージをつくりたい、ロゴを考えたいなどのほか、ご希望に応じて、複数のツールの使い分けやSNSの導入など、総合的なアドバイスも合わせてさせていただきます。通常のご依頼のほか、こちらもぜひご利用ください。

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